日本の自動車市場
admin≫
2016/01/27 20:51:09
2016/01/27 20:51:09
「閉鎖的な市場」米・フォードが日本撤退へ
1月26日(火)9時25分 日本テレビ系(NNN)
アメリカの自動車大手・フォードが今年限りで日本から撤退する方針であることが分かった。
アメリカのNBCテレビなどによると、フォードは25日、社員などに送った電子メールで、「日本は閉鎖的な市場で、輸入車は販売された新車全体の6パーセントでしかない」として、日本の市場から今年限りで撤退することを明らかにした。高齢化と、若い世代の“自動車離れ”が進む中で、「利益を上げる合理的な道筋が見えない」ことも理由に挙げている。
フォードは全米第2位の自動車メーカーだが、日本自動車輸入組合によれば、日本での2015年の年間新車登録台数はメルセデスベンツの6万5162台、BMWの4万6229台に対し、フォードは4968台と大きく差をつけられていて、ここ数年業績も低迷していた。
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久しぶりに記事ネタです。
アメリカのビッグ3のひとつ、フォードが日本市場から撤退するというのは、経済的な影響は小さくても、私のような自動車ファンにとっては大きな衝撃です。
実際、外国メーカーからすれば日本市場はどういう存在なのか、あらためて考えさせられますね。けっして小さい市場ではありませんが、日本は国産自動車メーカーが多く、以前ほどではありませんが、外国メーカーには不利な面があります。
具体的には、アフターサービスを強く求める、小型車を好む、軽自動車の存在などでしょうか。
①アフターサービス
日本には車検制度があること。それから自動車を自分で管理・整備する習慣もない(他国であるかどうか知りませんが)ので、何かあったらすぐにディーラーに駆け込みます。なので、ディーラーとしてはアフターサービスを充実させ、納車後も丁寧にその顧客と付き合い続けることが要求されますし、ディーラーもそういう努力をしてきました。
おそらくクレームに近い要求がされることも多いとは思いますが、日本メーカーはその風土を受け入れ、販売網を維持してきたわけです。
今となっては、販売時には値引きをしても、アフターサービスでのつながりを維持することで、修理・点検で収益を確保することが重視されています。
そういうアフターサービスの充実は、外国メーカーには大きい負担です。部品も取り寄せとなるとかなり高くつきますので、日本人からしても、外国車に対するアフターサービスの不安を持つ人が多い。実際は外国メーカーもそういう日本の風土にあわせてしてきているとは思いますが。
②小型車を好む
日本は都市部・山間部で道路が狭いことが多い。郊外のニュータウンでは困らなくても、都内の住宅地では大型車は苦しいですよね。
また、人口密度が高いために駐車場がすくなく、店舗の駐車場などは幅がかなり狭いことが多い。私のレガシィは5ナンバーを僅かに超える程度の幅ですが、それでも上皇に窮屈に感じることが多いです。さらにいえば、立体駐車場も多く、これも車幅制限が大きいので、小型車が有利です。
小型車の必要があまりないアメリカメーカーには、その時点で不利です。ちなみに欧州は古い街衢が多く、やはり小型車の需要があるので、欧州メーカーはあまり不利ではありません。寧ろ日本にはない素晴らしい小型車があります。
③軽自動車
もともとは脆弱な日本の自動車市場の中で、小型の商用車などの対策として生まれた「規格」です。普通自動車と違って制約がある分、安価で気軽に使えるものでした。
ところが自動車税が安いなどの有利さが残るにもかかわらず、性能が向上して普通自動車と同じように使えるようになりました。小型で扱いやすいけど、高速道路でも普通車に遜色ないので、運転が苦手な人にもいいですよね。また、生活に自動車が必需品という地域では、複数台所有するのにちょうどいいという面もありました。
日本は逆にこの規格の中で技術を磨いてきました。小さいエンジンで効率を高め燃費を向上させたり、過給器で高出力を得たり。小さいサイズの中で居住性と衝突安全性を両立させる工夫もしています。
こうなると軽規格は「制約」ではなく「特長」になっていきました。
しかし、日本にしかない特殊な規格ですから、そんな車作ってない海外メーカーにしてみれば参入が厳しい。優れた小型車を作っても、維持費が軽自動車にかなわないのです。
先代のスマートはたまたま軽規格の範囲に収まっていましたが、めったにありませんね。
なので軽規格は日本メーカーにとって海外小型車から市場を守る既得権益になっています。海外メーカーからすれば不満を持つのもよく分かる。かといって、軽自動車市場は日本ですっかり定着し、成熟していますから今更なくすことはできないでしょう。
こういう特殊な日本市場を刺して、アメリカメーカーは「閉鎖的である」と指摘します。軽規格に関してはたしかにそのとおりですが、普通自動車ではどうでしょうか。
外国車に対して日本には高級車のイメージもあって、少々高くても売れてしまうメリットもあります。経済力もありますから、高級車メーカーにしてみれば魅力的かな? 実際フォードよりポルシェのほうが売れてるわけです。
普通車の世界では特に輸入車に対して制約はなく、国民の中にも「ガイシャ」に対する憧れは強くあるので、うまくやれば儲かる市場でもあるのではないでしょうか。
実際、メルセデスは本国で販売するような廉価版は日本では販売せず、超高級車としてのイメージを維持することで大きな収益を確保しています。
小型車市場ではミニの成功はいうまでもありませんし、VWは大きな問題がありましたが、ポロやUP!など魅力的な小型車を売っていますし、フィアット500も可愛い外観からよく売れています。
こうみると「閉鎖的」という表現は普通車においては通用しないことが分かります。
翻ってフォードが日本で展開するモデルを見てみましょう。
ムスタングのような特殊な車はさておき、まず大型のSUVが多い。日本はSUVにはタフな走行性能より、高級感を求める傾向が強いですから、エクスプローラーなどはやや弱い。正直に言えば、値段の割に質感が劣る。
ポルシェのカイエンなどが理想なのですね。
中型車ではフィエスタやフォーカスなどがあります。アメ車のイメージにそぐわない非常に素晴らしい車ですが、日本人の感性に訴求するほどではない。デザインも悪くないけど日本車との差が見えないですね。
超小型車では昔「Ka」というのがありましたが、おもしろそうでもATが無かったり、質感最低だったりして全然売れませんでした。
つまり、日本が求める上質な高級車、機能的な小型車がフォードにはないということです。日本がほしいクルマがないんだから、それを「閉鎖的」といわれるのは納得できません。
ただ同情もしますけどね。アメ車に対して「デカくて燃費悪い」というイメージは根強くて、もうそうでもないんです、というのは浸透していません。それに、そのイメージのままの車もありますしね。
日本車はメーカーが多いせいもあり、かなりバラエティに富んでいますし、どのジャンルにもそれなりに競争力がある車がそろっています。
日本車に足りないのは、誰もが唸るブランドと質感・デザインに秀でた小型車。それを作れる海外メーカーは売れます。フォードにはそれがなかった、ということですね。
1月26日(火)9時25分 日本テレビ系(NNN)
アメリカの自動車大手・フォードが今年限りで日本から撤退する方針であることが分かった。
アメリカのNBCテレビなどによると、フォードは25日、社員などに送った電子メールで、「日本は閉鎖的な市場で、輸入車は販売された新車全体の6パーセントでしかない」として、日本の市場から今年限りで撤退することを明らかにした。高齢化と、若い世代の“自動車離れ”が進む中で、「利益を上げる合理的な道筋が見えない」ことも理由に挙げている。
フォードは全米第2位の自動車メーカーだが、日本自動車輸入組合によれば、日本での2015年の年間新車登録台数はメルセデスベンツの6万5162台、BMWの4万6229台に対し、フォードは4968台と大きく差をつけられていて、ここ数年業績も低迷していた。
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久しぶりに記事ネタです。
アメリカのビッグ3のひとつ、フォードが日本市場から撤退するというのは、経済的な影響は小さくても、私のような自動車ファンにとっては大きな衝撃です。
実際、外国メーカーからすれば日本市場はどういう存在なのか、あらためて考えさせられますね。けっして小さい市場ではありませんが、日本は国産自動車メーカーが多く、以前ほどではありませんが、外国メーカーには不利な面があります。
具体的には、アフターサービスを強く求める、小型車を好む、軽自動車の存在などでしょうか。
①アフターサービス
日本には車検制度があること。それから自動車を自分で管理・整備する習慣もない(他国であるかどうか知りませんが)ので、何かあったらすぐにディーラーに駆け込みます。なので、ディーラーとしてはアフターサービスを充実させ、納車後も丁寧にその顧客と付き合い続けることが要求されますし、ディーラーもそういう努力をしてきました。
おそらくクレームに近い要求がされることも多いとは思いますが、日本メーカーはその風土を受け入れ、販売網を維持してきたわけです。
今となっては、販売時には値引きをしても、アフターサービスでのつながりを維持することで、修理・点検で収益を確保することが重視されています。
そういうアフターサービスの充実は、外国メーカーには大きい負担です。部品も取り寄せとなるとかなり高くつきますので、日本人からしても、外国車に対するアフターサービスの不安を持つ人が多い。実際は外国メーカーもそういう日本の風土にあわせてしてきているとは思いますが。
②小型車を好む
日本は都市部・山間部で道路が狭いことが多い。郊外のニュータウンでは困らなくても、都内の住宅地では大型車は苦しいですよね。
また、人口密度が高いために駐車場がすくなく、店舗の駐車場などは幅がかなり狭いことが多い。私のレガシィは5ナンバーを僅かに超える程度の幅ですが、それでも上皇に窮屈に感じることが多いです。さらにいえば、立体駐車場も多く、これも車幅制限が大きいので、小型車が有利です。
小型車の必要があまりないアメリカメーカーには、その時点で不利です。ちなみに欧州は古い街衢が多く、やはり小型車の需要があるので、欧州メーカーはあまり不利ではありません。寧ろ日本にはない素晴らしい小型車があります。
③軽自動車
もともとは脆弱な日本の自動車市場の中で、小型の商用車などの対策として生まれた「規格」です。普通自動車と違って制約がある分、安価で気軽に使えるものでした。
ところが自動車税が安いなどの有利さが残るにもかかわらず、性能が向上して普通自動車と同じように使えるようになりました。小型で扱いやすいけど、高速道路でも普通車に遜色ないので、運転が苦手な人にもいいですよね。また、生活に自動車が必需品という地域では、複数台所有するのにちょうどいいという面もありました。
日本は逆にこの規格の中で技術を磨いてきました。小さいエンジンで効率を高め燃費を向上させたり、過給器で高出力を得たり。小さいサイズの中で居住性と衝突安全性を両立させる工夫もしています。
こうなると軽規格は「制約」ではなく「特長」になっていきました。
しかし、日本にしかない特殊な規格ですから、そんな車作ってない海外メーカーにしてみれば参入が厳しい。優れた小型車を作っても、維持費が軽自動車にかなわないのです。
先代のスマートはたまたま軽規格の範囲に収まっていましたが、めったにありませんね。
なので軽規格は日本メーカーにとって海外小型車から市場を守る既得権益になっています。海外メーカーからすれば不満を持つのもよく分かる。かといって、軽自動車市場は日本ですっかり定着し、成熟していますから今更なくすことはできないでしょう。
こういう特殊な日本市場を刺して、アメリカメーカーは「閉鎖的である」と指摘します。軽規格に関してはたしかにそのとおりですが、普通自動車ではどうでしょうか。
外国車に対して日本には高級車のイメージもあって、少々高くても売れてしまうメリットもあります。経済力もありますから、高級車メーカーにしてみれば魅力的かな? 実際フォードよりポルシェのほうが売れてるわけです。
普通車の世界では特に輸入車に対して制約はなく、国民の中にも「ガイシャ」に対する憧れは強くあるので、うまくやれば儲かる市場でもあるのではないでしょうか。
実際、メルセデスは本国で販売するような廉価版は日本では販売せず、超高級車としてのイメージを維持することで大きな収益を確保しています。
小型車市場ではミニの成功はいうまでもありませんし、VWは大きな問題がありましたが、ポロやUP!など魅力的な小型車を売っていますし、フィアット500も可愛い外観からよく売れています。
こうみると「閉鎖的」という表現は普通車においては通用しないことが分かります。
翻ってフォードが日本で展開するモデルを見てみましょう。
ムスタングのような特殊な車はさておき、まず大型のSUVが多い。日本はSUVにはタフな走行性能より、高級感を求める傾向が強いですから、エクスプローラーなどはやや弱い。正直に言えば、値段の割に質感が劣る。
ポルシェのカイエンなどが理想なのですね。
中型車ではフィエスタやフォーカスなどがあります。アメ車のイメージにそぐわない非常に素晴らしい車ですが、日本人の感性に訴求するほどではない。デザインも悪くないけど日本車との差が見えないですね。
超小型車では昔「Ka」というのがありましたが、おもしろそうでもATが無かったり、質感最低だったりして全然売れませんでした。
つまり、日本が求める上質な高級車、機能的な小型車がフォードにはないということです。日本がほしいクルマがないんだから、それを「閉鎖的」といわれるのは納得できません。
ただ同情もしますけどね。アメ車に対して「デカくて燃費悪い」というイメージは根強くて、もうそうでもないんです、というのは浸透していません。それに、そのイメージのままの車もありますしね。
日本車はメーカーが多いせいもあり、かなりバラエティに富んでいますし、どのジャンルにもそれなりに競争力がある車がそろっています。
日本車に足りないのは、誰もが唸るブランドと質感・デザインに秀でた小型車。それを作れる海外メーカーは売れます。フォードにはそれがなかった、ということですね。
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